桑の効能

は、葉も皮も枝も根も実も生薬、つまり薬効があり昔から私たちの健康のためにつかわれてきた植物です。

そして桑だけではなく、桑の葉を食べた蚕の糞まで生薬になります。

当院では、西洋薬・漢方薬だけでは体の不調が今ひとつの方に、養生のひとつとして桑を役立たせていただきたい思いから、桑製品をクリニックで販売させていただいております。

最近では、桑製品も手軽に入手できるようにはなりましたが、当院で販売するにあたり慎重に検討させていただきました。

まず第一に、完全無農薬で安心して摂取できるもの、栽培から加工まですべての工程において混ぜ物や添加物など使用していない100%天然素材のもの、そして栄養価の高い桑の製品であることなど、慎重に検討させていただいた結果、鹿児島のさつま桑本舗わくわく園の桑製品を販売させていただくことにいたしました。

の葉は辛涼解表剤、枝は去風湿薬、皮は止咳平喘薬、実は補血薬に分類されます。

桑の実を乾燥させたものは「桑椹:そうじん」という生薬です。

陰血不足による、耳鳴り・めまい・目のカスミ・口の渇き・糖尿病などに使う漢方薬に配合されます。
スーパーフードマルベリーとして果実酒やジャムに使われています。

桑の若い枝を乾燥したものは「桑枝:そうし」という生薬です。関節などにたまった湿を取るとされ、湿邪による痛みに使われます。

桑の根の皮をはいだものは「桑白皮:そうはくひ」という生薬です。肺の炎症による咳や呼吸困難をしずめたり、肺の不調によるむくみや尿量減少に使う漢方薬に配合されます。

ぜんそくの薬である「麻杏甘石湯:まきょうかんせきとう」に桑白皮を加えた漢方薬は「五虎湯:ごことう」といい、激しい咳にためしたい漢方薬です。

桑の葉を乾燥させたものは「桑葉:そうよう」という生薬です。
感冒の熱や目の充血、かすみ目に使います。昔からお茶として飲まれていました。DNJ:1-デオキシノジリマイシンという成分が含まれているという研究結果が出ました。DNJはブドウ糖と構造が似ているため小腸でブドウ糖より先に糖分解酵素(αグルコシダーゼ)に結合します。その結果ブドウ糖をはじめとする糖分の吸収が抑制されて血糖値の上昇が抑えられるため、糖尿病で糖の制限をされている方にも愛飲されています。インスリンの分泌も抑制されるという結果が出ています(図参照)。

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の結果より:桑葉エキスを摂取した量が多いほど血糖値の上昇が抑制され、またインスリンの分泌量も減少している。

また、フラボノイド類や食物繊維が動脈硬化の予防やコレステロールや中性脂肪の吸収抑制が期待できます。
便秘・高血圧・動脈硬化・糖尿病の予防やダイエットにも役立つと考えられる理由です。

当院で扱っている桑の葉の優れているところは、不要なものはカットしてくれますが、現代社会で不足しがちな葉酸、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ビタミンAなどが豊富に含まれていて補ってくれるところです。

最後に、蚕の糞は「蚕砂:さんしゃ」という生薬です。
体の湿を取り除きます。関節痛や嘔吐下痢などを治療する漢方薬に配合されます。

大地の栄養、大地の気をため込んで育つ植物のご利益に感謝してご馳走になりたいと思います。

院長 岡村麻子